final project:再帰分割を用いた建築構造の漸進的な密度の決定方法 | hagiri.org

本研究ではデザインした形を構造物で実現するときに必要となる補強を,構成する部材の密度をコントロールすることで行う.この手法によってスタンダードな四角四面の建築ではない別の可能性の強さや美的な外見を最大限生かしたストラクチャーの実現を試みる. 既存の手法と比べ,後付けの補強材を用いるのではなくメインの材の構成の変化によってそれを代替し,合理的な構造を提案することを目的としている.

 

柱梁に縛られず自由な形で建築を作ることが 可能な時代であるが,その外殻と反して中の構造は従来のラーメンやトラスで成り立っているものも多い.そこで構造の入り方が全体を崩さず成り立つ方法を探りたいと考えた. 規則を持ちつつ,建築の屋根や壁といった大きなスケールから人間の触れるような細かいスケールまで埋めることができる幾何学の再帰分割を利用する. 構造的な負荷のかかる場所に応じて,材の密度がグラデーショナルに変化する架構のシステムを提案する.

 

Danzer tilingと呼ばれる3次元空間の充填方法がある.A・B・C・K と名付けられた4種類の三角錐は相補的にABCKとその鏡像含む計8種類の三角錐でまたそれぞれを構成することが可能である幾何学である. Danzer tilingを選定した理由 数ある再帰分割可能な幾何形態からDanzer tilingを選んだのには以下3つの理由がある. ・三角面を持ち密度に比例して構造が強くなっていく事 ・ステップ数を増やしていった時に増える線や点の数が他の図形と比べて少なく,急激に複雑になることを避けられる ・異なるステップ数で分割されたグリッドを隣接させた時でも接合部の種類が増えない事

 

ABCKそれぞれのイテレーションごとの三角 錐,節点,線材の数を元に実際に組み立てるに当たって必要になったパイプの長さとナンバリングを算出する. 棒材の長さは18種類で約 1.5m 〜 9cm までとなった.

 

これらのシステムを応用できる展望があるものとして,仮設建築物や野外イベントでの移動施設のようなものをあげられる.材料のユニット化をすることもそういったストラクチャーに対して相性が良く,部材同士の組み合わせを変えるだけでその土地に適したデザインができ,見た目の複雑さや美しさと構成の合理性を兼ね備えたシステムを実現することができる.

//本作品は株式会社イメージミッション木鏡社様にご協力頂き,zometoolを用いて制作しました.この場を借りてお礼申し上げます.

2017.01 東京藝術大学卒業・修了制作展 にて展示